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美容に携わって30年のある日 忌み嫌ってきた葬儀の仕事を始めるきっかけとなる時は突然訪れた。。
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事務所に戻った我々は すぐに粉骨に使用する機械とは どんな

物か調べると、約四十万円もする、、たっけー、、どうすっかなぁ

買えねぇ。 そこから、どんな機械なら可能なのか、安く手に入る

物は無いかを調べたのです。 お婆さんには五万円の提示をして

あるので 来月半ばまでには対処方法を探さなくてはなりません。

数日間調べたところ、豆などの穀物も粉にする機械があると知り

ました。固い豆ならば焼骨のほうが ずっと柔らかいはずです。

次は何処で安く売っているのか調べ中古の機械を六万円で購入。

何度か散骨すれば元は取れるだろう、、と、仮に使い勝手が悪く

ても二回散骨すれば機械の元だけは取れるとの判断でした。

これで、準備完了、すぐにホームページの散骨料金も引き下げ

五万円に変更しました。それから数日後、何かにつけ僕の頭の

中に、そのお婆さんとの会話場面が現れるのです。それから更に

数週間経ち、月が変わろうとした頃、僕の前の席に居る、千明に

言います。 「俺さぁ、あのお婆さんの散骨を五万円で引受けた

けど、このまま実施して五万円貰ったら、あとで俺自身が後悔す

ると思うんだよ。 だから、一回だけ、遺骨を自宅に抱え供養して

いる人達の為に、総額一万円で合同散骨ってどう?」 それを

聞いた千明は「なるほど、ずっとじゃ無理だけど、一度だけなら

それも良いかもね」 これが合同散骨を決定した瞬間でした。

すぐにお婆さんに連絡をし、散骨は半年ほど先になると思うけど

一万円でできるようにするから少し待ってくださいと伝えると、快く

待ってくれたのです。 さぁ、それからが大変です。 合同散骨と

言ってはみたものの、よーく考えると、遺骨を抱えておられる方々の

年令層は高い事が予想されますが、高年齢の人達はアナログ

人間です。 メディアはテレビ、新聞、ラジオ程度で、パソコンなど

無縁の人達にどう伝える? 更に、遺骨を自宅に抱え供養して

いる、、自分がそれを望んだならともかく、墓が取得できないが為の

自宅供養なら、人に言いたい話しではない事は想像できる。

簡単に決めたものの、苦戦をするのは必至と覚悟する。

とりあえず、遺骨の相談に来ている人はいないだろうかを聞く為に、

群馬県庁内にあるNPOボランティアサロン群馬に行ってみる。

カウンターを挟んで数人の人が話しをしている。 よく見ると以前、

ここに在籍し、今はSIEN2という任意団体の代表をしている富澤

さんの姿もあったので すぐに声を掛けた 「あれ、暫くぶりです」

「あ、どうも」いつもニコニコと笑顔の印象のある人です。

SIEN2(支援ツー)と読みますが、僕より五つほど年上なので、

一番下の団塊の世代の人だからこそ、 なおさら実感できるので

しょうが、 我々が小学校時代に飲んだ脱脂粉乳を始めとして 

莫大な支援をしてくれたのがユニセフなんだそうです。 そのお陰で

自分達の今があるし、高度成長が出来た我々が、今度は世界の

貧しい国々を救う時だと思い、毎月一万円、年間一二万円

ユニセフを通して寄付を始めたのが SIEN2の始まりなんだそう

です。 今は海外旅行で持って帰った両替の出来ないコインや、

切手、ハガキなどを集めて換金して送っています。 この話しを聞

いた時は、すんげー人だと思いました。 本人は自分のできる身の

丈の事をするだけですよ。 と笑顔で言いますが、自分のポケット

から毎月一万円の寄付、、あなたはできますか? 正直、僕には、

そんな発想はできません。 この出会い後、富澤さんには、お世話

になりっぱなしです。挨拶のあと、少し話を聞いていると 「ところで、

今日はなに?」と振ってくれたので、これ幸いとばかりに、今回の

流れを話したのです。 すると、自分が新聞各社に記事の依頼を

する時はねとの話しをしてくれ、良い事なのだから、何なら自分も

一緒に行ってあげると言ってくれます。 ねっ 実に親切な良い人

でしょ? この数日後、場所を変え 改めて合同散骨の話しを

すると、それにしても安すぎるんじゃないの? 合わないでしょ? 

と言われました。 確かにそうかもしれませんが、僕の考え方を話し

ました。 ひとつには五万円貰ったら自分で後悔すると感じた。

そして、確かに一万円で、焼骨を乾燥、粉骨にする、喉仏用

小さな容器、散骨場までの送迎費、そして、消費税の全て込み

ですから儲かるかどうかのレベルではありません。 でも、それで心の

痛みが取れる人が居て、 あんしんサポートが若干の赤字だとし

ても、もし、一紙でも新聞で取りあげてくれたら、広告宣伝費だと

思えば良いじゃないですか と話したのです。 

それを聞いた富澤さん、納得はできなくても理解はしてくれたようで

ならば、自分の知っている新聞社の人がいるから、その話しをして

みますか? と言ってくれたのです。 記事にしてくれるかどうか分り

ませんが、僕が話すより、武井さんが話したほうが思いが伝わると

言われました。後日、新聞社の方に話しをさせて頂いた結果は、

翌年の新聞に紙面の四分の一をカラー写真付きで、直接ではなく

武井という人間を紹介する形で 「最高の供養を考える」という

タイトルで掲載されました。 記事の最後に「蓄えも無く、わずかな

年金で暮らす高齢者があまりにも多く、こうした人達もまた、自分

たちの葬儀費用を心配しているという現実。 低料金の葬儀を

実現する事で「あんしんサポート」がそうした人達の心の支えであり

たいと思っている」と書いてくれたのですが、それ以降の葬儀では

「この記事を見て助かった、これで救われた」と思ったと記事を切り

抜いて持ち歩いておられた方が何人もいるのです。 ときたま、

記事を見られた人は良いけど 今日の、、この瞬間にも きっと

高額な葬儀に対し胸を痛めている人達は沢山いるのだと思うと、

どうしたら、我々の存在を知らせられるか、また、群馬だけでなく、

日本全国で、同じような思いを持つ人達が立ち上がってくれたら、

と思いますが、この思いをより強く、再認識させてくれたのが、富澤

さんという人でもあるのです。 こうして、一度だけの一万円合同

散骨の実施が決まったのですが、僕の事ですから あと一回や

二回は一万円合同散骨はするんでしょうね。・・・つづく

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