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なんと七十代の女性ではなく、後から聞くと六十一才の女性だった
のです。それを見た途端、さすがに俺の親だ、、と思うと軽く笑いが
出てしまいました。 「何かおかしいですか?」 「いえいえ 思い出し
笑いしちゃいました すみません」正直、内心ではホッとしました。
これからの人生はいくらでも考えられる年代だったからです。 軽く
挨拶を済ませると車に乗って貰い静かに話のできる場所を聞きます
案内してくれたのはホテルのロビーでした。 最初の一時間ほどは、
本当に息子さんなのですか?の繰り返しです。父親は彼女に天涯
孤独の身だと言っていたそうで 子供さんが居るなんて 今でも信じら
れないと言います。 ところが僕の名前を言うと 「その名前は甥っ子
さんだと何度も聞いた事があります」と言うのです。「はぁ 天涯孤独
なのに甥ですか?」 そう言われた彼女は 「あ、ほんとだ」 初めて見
せた笑顔でしたが それで打ち解けたようです。 その日は、結局
ホテルの部屋をとって一晩中寝ずに話をしました。青い海が好きで
海外旅行にも あちこち連れて行って貰ったようです。 最後の海外
旅行となったグァムでの写真は、頭にバンダナを巻いたジェリー藤尾
さんのような風貌の男性が写っています。僕の頭の中にある容姿と
同じ ちっとも変わっていませんでした。 一通りの話をすると父親の
最後や葬儀、そして、焼骨は好きだったハワイの海に散骨したと
聞かされました。 散骨という言葉は聞いた事がありますが本当に
あるんだ、、これが最初の感覚でした。 父親は人生の終幕は全て
計画を立ててあり、線香は嫌いだから要らない、赤いバラを供えて
くれ、俺に万が一が起きたら近所の葬儀屋さんに行け、全て段取り
はしてあるから、と言われており 逝去から散骨までの全てを、父親
に言われ通りに出来た満足感があり、今のこの場に父が居て 良く
頑張ったって微笑んで見守ってくれている気がすると言うのです。
そんな風に話す彼女からは、満足感が伝わってきます。僕の感じた
印象は彼女の中で尊敬する人であり、言われた事がちゃんと出来
た満足感があり、今尚自分を見守ってくれていると感じさせるだけの
信頼関係があったのだけは分りました。父親と彼女、二人の生活
では幸せな時間を過ごせたのだと分ると 僕の中にも安堵感が
広がったのです。色々な話をした最後に「父親がなぜ散骨を選択
したか分りますか?」 と聞く僕に 「いいえ、分りませんが海が好き
だったから?」と言うので こんな風に言いました。「いいえ そうじゃ
ないですよ。自分の遺骨があったら あなたの人生の足かせになる
から、何も残さない方法を選択したはずです。きっと父親にとっても
、あなたは大切な人だったんですよ。 だから、自分が居なくなった
時は、一人で寂しく過ごすあなたより、誰かに包まれて幸せに過ご
すあなたを見ているほうがずっと気は楽なはずです。その為の何も
残さない選択、、だから、父親の亡霊に縛られるのではなくて父親
との思い出は心の中にしまって、 毎日を元気な笑顔で過ごせる
人生を選択する事が父親に対する最高の供養であり、安心させる
方法だと思いますよ」と言って彼女との時間をあとにしたのです。
群馬までの数時間、車中、頭の中で昨日からの話を繰り返して
いると、彼女から感じた満足感とも、達成感とも思える様子が、
やたらと気になるのです。お葬儀と満足感、どうしても僕の中では
ミスマッチです。葬儀=悲しみしか知らない僕にとって新鮮な感覚
でもありました。 三十八年ぶりに見た父親の写真、別の女性と
暮らした年月、恨み辛みが芽生えても不思議でない状況なのに、
僕の中には彼女に対する感謝と、幸せだったと思える安堵感だけ
しかありません。 変な感覚、、こんな風に思わせる葬儀ってなん
だろう? 僕の知らない何かがあるのかしれないと思うと帰ったら
色々調べたい衝動に駆られながら、西に沈む太陽に向って一路
前橋までの余韻とも言える心地よい数時間でした。・・・つづく
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