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美容に携わって30年のある日 忌み嫌ってきた葬儀の仕事を始めるきっかけとなる時は突然訪れた。。
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九月のある日、高崎市在住のお婆さんから一本の電話が入った

のがきっかけです。 電話で「近所のNPOワンダフルの赤羽さんが

県庁から、あんしんサポートの散骨パンフレットを持って来てくれた

のですが、記載された八万円で本当にできるのですか?」という

内容でした。 電話では詳細が伝わらないと、来社できるか聞くと

足が悪く車の運転も出来ないと言うので、日時を決めて我々が

ご自宅に伺う事にした。 この辺は戦争の空襲で焼けなかったの

ですか?と言いたくなるような ごちゃごちゃとした旧市街地の中

やっと見つけたのは小さめの一軒家です。中に入ると足が悪いから

でしょう。 色んな物が部屋中狭しと置いてあり、布団も敷いたまま

ですが当然の光景とも思えます。 お婆さんの飼い猫が、自分の

場所だと主張するかのように、布団の上で丸くなっています。

何処に座って良いか迷いますが、空いてる所を見つけて座ると

お婆さんが話し始めました。 「実は去年、私の次男が埼玉で亡く

なったのですが、墓も無くて遺骨は隣の部屋に置いてあり、遺骨を

見る度に、自分が生きているうちに何とかしたい、、、そう思って

いると、ワンダフルの代表である赤羽さんが 県庁から二枚のパンフ

レットを持って来てくれたのです。 そこで、お寺さんが主催する

NPOに見積りを取ると十七万円ほど掛って、管理費とかで毎年、

数千円掛る様なので とても無理だと分りました。 そこで八万円

と書いてあった あんしんサポートさんに電話させて貰ったんです」

と言うのです。八万円は税込なので他には何も掛りませんと 伝え

はしましたが、色んな話しをしていると、国民年金の一人住まい、

家は親戚の持ち物で 安くして貰っているが家賃は払っている、

生活費は全て年金頼り、病院へは手押し車を押して歩いて行く、

等々ある程度の生活が見えてくると、八万円は楽じゃないだろう

事は誰でも分る話しです。 そこで、隣の千明に聞きます。

「費用を下げる方法はあるか?」 少し考えて「粉骨処理を業者

でなく、自分でして、余分な容器類を省けば三万円は下げられ

ますが」今度は僕が考えます。 自分で粉骨にするって、、どうやる

んだ? 何かの機械は必要だろうけど、それっていくらなんだろう?

この先はこの場で考えても答えは出ませんが、下げる方法がある

のは確かなようなので「分りました。五万円で良いですよ。我々も

これが精一杯のようなので、いかがですか?」 お婆さんは即答で

「はぃ 結構です、でも、今はお金が無いので来月半ばの年金が

入ったら連絡させて頂きます」 これで、一件落着とご自宅を後に

したのですが、 話しの途中で ワンダフルの赤羽さんが来ていた

のです。スーパーの籠のような中に昼食なのでしょう。いくつか入れて

販売して歩いてる? って感じの女性が部屋に来たのですが、

お婆さん宅を出て、ついでだからとワンダフルに行くと その女性こそ

が赤羽さんでした。 半径二百メートルの範囲を対象に老人の

集まる場所を提供し、ハーモニカの演奏会や、バスでの小旅行、

そして、宅配お弁当の提供などを行なっているNPOのようです。

彼女の話しの中で、印象に残ったのは「介護認定を受けられた

人は良いけど、介護認定を受けられない直前の人が、一番問題

なんですよ。 何の支援も受けられないって事ですからね。現に

半径二百メートルだけなのに二十名弱の方々が会員として居る」

とのことでした。 この話しは、すぐに納得、理解のできる事です。

非常に良く似た話しで生活保護があります。 生活保護の人が

一番大変だと思っておられる方のほうが多いでしょうが、現実は

違います。 生活保護の認定が受けられず収入の無い人達の

ほうがずっと大変なのが現実だからです。 僕らが伺ったケースでは、

痴呆が始まった妻と お爺さん二人だけの 老人家庭で年金は

二万円だけです。 どう考えても生活できません。 なら何で生活

保護が受けられないかというと、小さなボロ屋が 自分の家だから

です。 元々痴呆になったお婆さんが仕切ってきた家で、ご主人は

若い頃から少し知恵の遅れた方だったのだそうです。だから、家を

処分うんぬん という話しになると 人を家の中に入れなくなる

ご主人、、という構図なのです。 生活保護には、家のように不動

産や、自動車の所有も駄目です。 行政は決まりがあるので出来

ないと言うでしょうが、本来、民を守る為に作られた決まりなのに、

その決まりに振り回されて 民を守れない不条理の改善や特例を

付則で補うなどやれば出来るはずだと思う。 街の片隅で狭い

範囲で行なわれていてる支援活動、 本当の意味での地域支援

とは、こんな活動なのかもと またひとつ教えられた気がします。

・・・つづく

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散骨場に到着した我々は、家族に伝えます。「四百坪の何処に

撒いても良いのですが、道路脇は、 目の前にある保育園の園児

達の声も聞える距離なんですよ」ご家族はすぐに答えます。「なら、

そこが良いよね」散骨をし、生花を供えると家族三人は手を合わせ

故人の成仏を祈ります。 「ここ良い場所ですね。四季折々の

風景が目に浮かびます。 暗い湿気だらけのお墓よりずっと良いで

すね」気に入って貰えて良かったです。 山の一番下に位置する

四百坪のあんしんサポート専用散骨場は、すぐ脇に道路が走って

いるのですが、道路からは、数メートル高くなっているので俗世間

からは見えず、散骨場からは世の中が見えるのです。

ちなみに、この散骨場はあんしんサポートで父親の葬儀をされた

方が、父の残した不動産の中から無償で提供してくれているもの

です。 かい摘んで話すと、あんしんサポート事務所に来て初めて

僕の話を聞いた本人は 「聞いてるだけなら本当に良い話だけど、

今時そんなに良心的な奴がいるはずも無いし、葬儀業界なんて

嘘臭い最先端の業種だろうが」と思っていたそうです。

ところが、その数ヵ月後、父親の葬儀をする事になったのですが、

共に過ごした葬儀四日間で 以前僕らのくちから聞いていた事が

本当だったのだと分ったんだそうです。 そして追い討ちのように

成ったのが 法務局への相続による名義変更なんだそうです。

息子一人なのですから、相続は非常に楽です。 そこで、高い

費用を払わなくても自分で充分できるはずです。 と言うと「教えて

貰えないですよね?」と言うのです。 教えると言うより法務局に

行って担当者に どうすれば良いか聞けば教えてくれると伝えたの

ですが 不安そうにしているので「なら。一緒に行ってあげますよ」、

、あぁーあ、、また余計な事言っちゃったよ。でも言っちゃったものは

仕方ないので前橋から一時間運転して、待ち合わせの日時に

沼田市の法務局に行ったのです。

法務局の担当者は親切に教えてくれましたが、聞いている彼は、

時々、僕の顔を見ます。 実は中に入る前に説明されても分ら

ない時は 僕の顔を見れば分るように話を進めると言ってあるから

でした。 何度か引っ掛かったものの手続きの方法が分ったようで

名義変更はスムースだったようです。 その時、以前、話の中で

出た散骨場をいずれは持ちたいと言う話を思い出し無償提供を

決めたと言っていました。 折角親切に話をしてくれたのに当時の

自分は疑いの眼差しで見ていた事に、申し訳なかったと思っていた

ところへ、車で一時間以上掛る場所まで無料で来て、手続きの

仕方を教えてくれる、、そんな人達を疑った自分に、何かしないと

って思ってくれたようです。 散骨場と言えば、平成二十三年四月

八日に、一万円で合同散骨を実施します。マイクロバスに十九名

乗せて行く事になっています。今は合同散骨の五日前なのです。

だから、 合同散骨当日の様子は書けませんが、そこに至った

経緯は書けますので、散骨場の話が出たついでに、書き記して

おきたいと思います。・・・つづく

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これを聞いた僕は すぐに高崎市役所に電話の指示を出し確認

させると 午後三時の釜ならば空いているので予約可能と分り

すぐに予約。 前橋市役所を あとにして高崎市役所に移動、

火葬場が変更になった旨を家族に告げ市役所で手続きをするが

予定より三十分遅れたので、 湯かん、納棺だけ済ませ、葬儀を

行った後で、綿衣裳を作るという変則な流れとなりました。

また搬送した時に エレベーターの使用は無理だと分っていたので、

棺は階段を使って運ぶ事にして 人手は準備して頂きました。

男性八名で 七階から一階まで運びましたが、 階段スペースが

広かったので 僕は掛け声だけで肉体労働はせず、依頼した

霊柩車へと運び入れられたのです。

当日に変更して 火葬ができたのは ラッキーとしか言いようがあり

ません。 前半戦は綱渡り状態で バタバタしましたが、無事に

火葬が済んで、自宅に戻ると、喪主から散骨の依頼がありました。

焼骨を安置し、皆さんが線香をあげると撤収です。 全てを片付

けて帰ろうとした時、それまで 何も言わずに 遠巻きにして我々の

仕事や、葬儀を見ていた故人の家族が我々を囲むように、近づ

いて来て言うのです。 「昨日から ずっと見させて頂きましたが、

どんな時も心のこもった対応で お金を払ってもして貰えないような

温かみのあるお葬式をしてくださって本当にありがとうございました。

私は神奈川に住んでいますが、 あんしんサポートの支店は無い

ですか? あるなら我が家の時も是非お願いしたと思って、、」と

言われたのです。 あまりに突然の褒め言葉に僕も、千明も泣き

そうでした。 こうして、初めてのオリジナル葬儀は終了したのです。

帰りの車中、 今まで味わった事の無い満足感と充実感、これも

初体験でした。 ギリギリの所でクリアした初めての葬儀でしたが、

こんな風に書くと 「あーやっぱついてる人なんだぁ」って思っちゃう

人もいるでしょ? なので、火葬場の変更が出来なかったとしたら、

どんな対応をしたと思いますか? これを読む皆さんならば、、との

質問に対し どんな答えを出したか分りませんが、 僕のとる対応

策では あんしんサポートが市民外火葬として 六万円払ってでも

火葬をします。 時には損をするかもしれませんが、死亡届けを書く

段階で、しっかり確認出来なかったのは我々の責任だし、痛みを

知る事で、次の失敗を防ぐ、、それがちゃんと前進する事に繋がる

でしょうし、たった数日の葬儀ではあるけど そこで得た信頼感を

壊すことのほうが六万円より大きいと思うからです。

いかがですか? 僕の対応策と皆さんの考えと同じでしたか 違い

ましたか? この設問には残念ながら模範解答はありません。

ただ、自分の描いた対応策を実践したら そこからは何を得られ、

何を無くすのか、 僕の対応策と比較して 「if・もしも」のシュミレ

ーションをしてみるのも面白いかもしれません。

さて、我々のほうが感動させて貰った葬儀から一夜明け、午前

九時、ご自宅から群馬県北部沼田市にある あんしんサポート

散骨場に出発、焼骨は昨日預かって粉骨にしてあり、葬儀に

供えた生花も全て積んで行きます。途中、渋川の道の駅でトイレ

休憩を取ると一気に散骨場へ向かったのです。・・・つづく

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